カテ室の環境をOn Goingで整えていく
社会医療法人 清光会 岐阜清流病院 理事長
名和隆英先生

岐阜清流病院は,岐阜市の北部地域を代表する中核病 院である。以前は岐阜中央病院とよばれていたが,経営 母体が清光会に変わった 2018 年から岐阜清流病院となっ た。また近年,日本医療機能評価機構認定病院の認定を 受けた。20 の診療科,372 床を備える本病院には最新鋭 の医療設備が多く導入されており,特に整形外科と循環 器内科診療に力を入れている。整形外科は人工関節置換 術についての深い知見と治療実績を持ち,2022 年に導入 した手術支援用ロボット ROSA により一層の治療成績向 上が見込まれる。また,県下屈指の規模を誇るリハビリ テーション施設や緩和ケア病棟まで備えており,急性期 から回復期,はては終末期までシームレスに対応する, 文字どおりオールインワンの病院と言えるだろう。そし て,医療・介護を通じて地域住民に「笑顔あふれる暮らし」を届けるという理念を掲げ,気軽に利用できる親し みやすい病院を目指している。それを実現するためには, 医師の働き方改革への向き合い方も考えなくてはならな いだろう。今回は岐阜清流病院理事長の名和隆英先生に, 日々の診療の中で何をどう感じているのか伺った。
カテ室の生産性を高めて働き方改革に対応する
名和氏は卒後長く勤務していた岐阜大学病院でイン ターベンション治療に出会った。その当時は進んで循環 器内科医を目指したわけではなく,研修が終わりに近付 いた頃に決めたという。「命にかかわれる科に携わりた いと思っていましたが,特に循環器科を希望していたわ けではなかったのです。しかし,やってみるとどんどん 面白くなっていって,上司に恵まれたこともあり,気付けば循環器内科医になっていました」と,氏は笑う。そ うして氏はその頃を振り返りながら,「最近は岐阜大学 でも循環器を志望する人が少ないですね」と言う。循環 器内科を目指す若手が減っているのは岐阜だけではな く,全国的な流れとも聞いている。他科に人材が流出し ているという議論はさておき,現実問題として志望者が 少ないのであれば,少ない人数で効率よく診療・治療を 進めていくことが大きな課題となる。緊急も含め,治療 に対する新たな社会的な仕組み作りが必要になってくる かもしれない,と名和氏は考えている。そこに働き方改 革が絡んでくるのだから,話は複雑になる。

現場に立つ身で感じる働き方改革
生産性を考えれば,できるだけ無駄な時間を使わない ことや,マンパワーの配分が重要となる。その点につい て伺ってみると,「要はタスクシフトです。当院でも放射 線技師や看護師,検査技師などにできることをやっても らうようにしています」と,間髪入れず答えが返ってき た。循環器内科はやることが多岐にわたり,働き方改革 を順守しようとすると実働時間は減らされるが,岐阜清 流病院では医師の入力業務・書類業務はドクターズク ラークや薬剤師に任せ,のちに医師が承認するような形 で対応している。「医師はできるかぎり患者さんのとこ ろに行って診療と必要な指示をして,書類業務などは必 要最低限にしてもらっています。看護師も,看護師業務 以外を看護助手に渡すことになりますが,すべて法律 上,問題とならない範囲でやっています」とのことだ。 ただ,宿直に関してはどうだろう。例えば,土曜日や日曜日の当直は一人あたり月 1 回と決められているわけだ が,月によっては人員配備に頭を悩ませなければならなくなる。岐阜清流病院では,関係の深い岐阜大学から応 援があるのでまだ恵まれている,と名和氏は言うが,応 援を期待できない施設はさらに難しい判断を迫られるこ とになるのではないだろうか。また,ガイドラインどおりにするならば,夜間の救急車の数に制限がかかってし まうことは避けられない。法の遵守は間違いなく大切な ことだが,医療には社会的な使命もあり,病院には経営 の問題もある。地域医療を守りながら,どこで帳尻を合わせるのか。「今のところ,やってみて判断していくとし か言えないですね」と,名和氏は対応の難しさを感じて いる。働きすぎて安全に医療ができなくなるというのは 論外だと述べたうえで,地域住民や患者さんに迷惑をかけるのも大きな問題だと氏はとらえている。医師の人生 を大切にするべきということは理解しているものの,医 療には社会から与えられた役割があり,病院の経営者と して,それを安全にこなせるような仕組みを作らなければいけない。
手技のストレスを減らしてカテ室の生産性を高める
岐阜清流病院は 2023 年 11 月下旬に島津製作所の Tri- nias を導入した。「以前の装置が古いこともあったので すが,画質が良くなったことにカテ室のスタッフ全員が 喜んでいます。直感的な操作感と動作スピードが速いこ ともそうですし,特に緊急のときに電源を入れてから立 ち上がりが速くなった点が素晴らしいですね」と氏は言 う。また,Trinias は国産の装置であるため,操作系の表 記は当然日本語である。日本人には日本語表記のほうが なじみやすい。「インターフェースは直感的です。コント ロールモジュールはイラストと数字で構成されているた め分かりやすく,各操作はワンタッチで行えます。レ バーやボタン操作のように何度も押す手間が省けて,わ ずらわしさが減りましたし,AI による画像処理 SCORE Opera も低線量で,画質も満足しています」と氏は笑顔 で言う。さらに SCORE Link という定額制アプリケー ションプラットフォームの期待について語った。現在多 くの手技支援アプリケーションが販売されているが,使用頻度が高いものとそうでないものは施設によってさま ざまである。SCORE Link は,各施設の実情に合わせて パッケージの中から選択し年間契約できるため,必要な 機能に絞って投資できる。また,機能やソフトウェア バージョンもその都度最新に更新されるため長期的に装 置を有効活用できる。「技術の進歩は素晴らしいと,常々 感じています。やはり最新鋭の装置は良いですね」と, 名和氏は笑顔を見せる。岐阜清流病院では,糖尿病の患 者さんと透析の患者さんが多いことから,PCI より PTA のほうが多い。EVT を行うこともあるので,装置をマル チに活用していける観点からも Trinias は適していると いう。以前は装置の可動域の問題で,カテ台を旋回・角 度付けするなどの動作が必要だったが,C アームのほう が稼働してカバーしてくれるので,メディカルスタッフ の動線も良くなっているという。またシステムもフルモ デルチェンジし,ケーブル本数も少なく清潔感のあるカテ室になったとも語った。先進的なシステムの導入でカ テ室の環境を良くしていくことはスタッフの労力の削減 にもつながり,働き方改革という新たな試みに対応する 一つの手段になるかもしれないと名和氏は考えている。
一生懸命に働いてくれる職員たちに報いたい
名和氏は岐阜大学附属病院で働きながら,本施設(当 時は岐阜中央病院)に非常勤で勤務していた。それと同 時に,実家の医療法人(名和内科)でも診療しながら, 大学病院の医局員でもあったという氏の経歴はなかなか に興味深い。「岐阜中央病院では 5 年程度非常勤の外来を 担当していたのですが,病院の経営が傾きだして,どう いうわけか私に声がかかったのです。もちろん資金面も 苦労しましたが,何よりも先輩・後輩にかかわらず多く の人の力をお借りすることができて今に至っています」 と,名和氏は当時を振り返る。「私には人に助けられる才 能があるのかもしれませんね」と笑う名和氏だが,一緒に走ろうと考える人たちが多くいるということは,氏の 人徳の賜物なのであろう。「正直なところ,自分にとって の得というのは感じたことはないのですよ。本当に達成 感しかない。それがあるのでやれていますが,達成感の 10倍ぐらい打ちひしがれることが多いのも事実です。で も,これも自分が選んだ道かなと思って楽しくやってい ます」と笑顔を見せた。

今後この病院をどのように率いていくのかを伺ってみ ると,まずは職員の報酬を上げたいという。経営者たる もの,一生懸命働いてくれる職員たちに報いたいと考え るのはごく自然なことで,経営状態を良くして報酬アッ プにつなげたいと,名和氏はこぶしを握る。岐阜清流病 院の 2 本の柱である整形外科と内科は親和性が高い科 で,両科とも高齢化との関連性が非常に高く,互いに助 け合えるところが大きいことから,この組み合わせで病 院の実績を伸ばしていくことが名和氏の見据える展望 だ。整形外科のスペシャリストである病院長の松本 和氏 に整形外科の実績を積み上げてもらいながら,全包囲型 の医療をできるところまで続けたいと,氏は考えている。

