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整然としたカテ室で心疾患に挑む


福岡大学病院 循環器内科

杉原 充 先生

 福岡空港を降り立ち,博多駅から地下鉄七隈線の福大 前駅で下車。エスカレーターを上がったところが福岡大 学病院の玄関,外来の受付である。あまりのアクセスの 良さに驚きを隠せない。患者さんだけでなく,勤務する 側にとっても利便性は非常に高い。福岡大学病院は 2024 年の 5 月 7 日に(新)本館がオープンし,循環器 を扱う部門はその動き方が大きく変化したというので, 循環器内科を率いる杉原先生にそのドラスティックな変 化について伺った。

 2003年に循環器内科医となった杉原先生は 2008 年 から福岡大学病院で勤務している。先生は学生のころか ら循環器内科を目指し,自分の進む道は PCI だと心に決 めていた。「実習で見た心筋梗塞の患者さんのドラマ ティックな展開で,これしかないと思いました」と,先 生はにこやかに笑いながら過去を振り返る。PCI に感動 して PCI に邁進してきた先生は,現在 EVT に精力的に 取り組んでいる。「福岡大学病院に戻ったときは PCI を 中心にしていましたが,末梢動脈疾患患者は心臓,脳血 管イベントの合併が多いので,末梢動脈疾患を早期に発 見することで,脳心血管イベントの予防につながると考 えています」と続ける。
 
 2024年にオープンした本館は福岡大学病院における 循環器治療に変革をもたらした。カテ室の環境が大きく 変わったのだ。本館オープン以前の福岡大学病院では, カテ室は中央棟に 1 室,旧本館に 2 室という配置だっ た。さらに,ハイブリッド手術室は旧本館の中の手術室 の中にあった。「建物が違うので移動も物を取りに行く のも大変で,動線がどうこう言う話ではありませんでし た」と先生は言う。現在は本館の中にカテ室が 3 室連続 で配置され,2 部屋のハイブリッド手術室も含めて1つの空間の中に収められた。スタッフ配置の効率が一気に上がり,マンパワーを流動的に補うことができるようになった。思い返せば大変,という言葉では足りないと杉原先生は笑う。

 こうしたカテ室の環境整備に合わせて,福岡大学病院 は新しく心臓専用機と汎用機を導入した。どちらも島津製作所製のTrinias series with SCORE Opera(以下 Trinias Opera)のバイプレーンである。実は本館のカテ室は以前のカテ室よりも若干小さくなったそうなのだ が,いざ設置してみると窮屈感は感じない。なぜこの装置を選んだのかを伺ったところ,一番はやはり先生の好 みの画質だったからだという。加えて,今まであまり意識していなかった意見が飛び出した。「患者さんに安心 感を与える洗練されたデザインだと思ったからです」。
 
患者さん視点で考えてみる。いざカテ室に入った時の心理状態はどうだろうか。何を見ているだろうか。何が聞こえているだろうか。緊張した状況で,ひょっとすると術者はおろか,看護師さえも見えていないかもしれな い。おそらく最初に目に入ってくるのが血管撮影装置 だ。視点を少しずらせば,大きなモニターに映るさまざ まな画像。普段目にすることなどない先進治療のイメージそのものといえる。「色使いも含めて機械のデザイン は大事だと思います。シンプルで清潔感を感じさせつつ 洗練されたデザインは患者さんにとっては安心材料にな ると思います」と杉原先生は患者さんの視点を説明する。個人的にもっともだと感じられる意見だ。

「今回の装置は操作が非常に直感的というか,簡単です よ」と杉原先生。術者が装置を操作するのもパネルをワ ンタッチでできる。このワンアクション 100+という タッチパネルはカスタマイズして自分の使いやすいよう に設定できる。術者は,自分のペースで動くことができ れば手技のテンポを乱されることが少ない。緊急時などマンパワーが足りない場面でも術者一人で操作ができるということは大きなアドバンテージになる。

 

 近年,被ばく量の低減はカテ室での重要な課題の一つ と言える。杉原先生の言う「Trinias Opera の画質は高 く,透視保存のみで手技を進めていける」というのは, 撮影する回数を減らすことにもつながり,全体の被ばく 低減効果にも寄与するだろう。Trinias Opera には,低 線量と高画質を目指して開発された SCORE Opera というAIフィルタを用いた画像処理も搭載されているのだ。
 
 EVTを施行する者にとって使いやすいのは手技支援 アプリケーションのSCORE RSMとSCORE Chaseだと 先生はいう。杉原先生は,自身の EVT でこの 2 つのア プリケーションを必ず使用する。特に足に傷がある患者 さんに対する手技では,どうしても傷から下の足が動い てしまって DSA では見えないパターンが多かったそうだが,「SCORE RSM は足が動いても確実に撮像できる 機能なので助かる」と説明があった。SCORE Chase は 自動長尺機能で下肢全域を見やすく表示する。テーブル を自由に移動させながら追跡撮影を行い,長尺画像を自 動生成する。SCORE RSM との併用が可能で,血管視認 性の高い長尺画像を得ることができる。「SCORE Chase は視覚的に分かりやすくて患者さんへの説明もしやすい です」とのことだ。
 
「スケッチ機能も良いですよ」と先生は続けた。例えば,完全に詰まっている血管の出口をライブモニターにスケッチして出口を術者に見せる。術者は横にリファレンス画像を出して見ながら手技を進めるより,はっきりと ゴールを見せたほうがワイヤーを誘導しやすいのだという。「実際,ワイヤー通過に難渋していても,スケッチし たら次の瞬間にワイヤーが難なく通過するケースをよく経験しています」と杉原先生は続けたがなかなか面白い エピソードだと感じた。
 
 その他にもステント強調を行えるアプリケーションな どさまざまなアプリケーションが準備されているが,それらは SCORE Link というサブスクリプション契約が 可能である。契約の内容にもよるが,最新のバージョン や新しく追加されたアプリケーションが利用でき導入か ら時間が経ったとしても一番新しい状態で装置を使い続けることが可能だ。
 
 本館にカテ室と手術室が集約したことでそれぞれの治 療室が個別管理になり,タイムスケジュールの設定が以 前よりシビアになったものの,運用に関しては従来どお りの臨機応変な対応ができるように大学側が調整してく れたので今のところはやりやすいと先生は言う。循環器 治療施設の集中化は看護師の働き方にも変化をもたらし た。これまではカテ室の看護師は放射線部所属だった が,現在は専属の看護師が必ず手術室からカテ室に来る ようになった。新しくカテ室に来る看護師らに対しては 都度の話し合いだけでなく,月ごとに全体のカンファレ ンスで業務改善を図っている。手術室とカテ室の風通し はどんどん良くなってきており,循環器内科と外科の関 係性は非常に近くなったと先生は満足げに語る。
 
 大学病院の役割として,地域医療への貢献と同様に若 手医師の育成教育が大切な使命だと思いながら杉原先生は日々活動している。若手が働きやすく何かに情熱を 持って取り組んでいける環境を整備したい。「カテ室の 見学に研修医たちが来るのですが,今年と去年では反応 がまるで違います。ずらりと並んだカテ室に,ずらりと 並んだ最新機器やモニター。カテ室の活気がひしひしと 感じられて,かつ循環器治療のプロの集まりのようで, かっこいいですよね」。最近は内科医への希望が減って いると聞くこともあるが,福岡大学の循環器内科では 少々事情が異なる。今年は入局者の希望が増え,他大学 からの入職も多く,定員を上回る希望があったそうだ。 モチベーション高く働くための最新の設備環境を提供で きて,またカテ室スタッフ全員が楽しく情熱を持って取 り組んでいれば,それは伝わるのだと先生は確信してい る。明るく人当たりの良い杉原先生を見ていると,カテ 室の雰囲気は疑いなく良いものに感じられる。


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