カテ室の効率化改革
佐久市立国保浅間総合病院
篠崎法彦先生

篠崎氏が日々奮闘している浅間総合病院は長野県佐久市にある。佐久市は群馬県との県境に位置し、長野県の中でも関東に近いエリアと言える。長野県内第4位の規模の都市で、上田市と並ぶ東信地方の中心都市としての地位を確立しつつある。浅間総合病院は昭和34年6月に内科・小児科・外科・産婦人科・眼科の5科、入院施設収容定員20床という規模で開院した。そこから今回まで地域の要望に合わせて規模は大きく拡大し、令和4年4月現在では診療科は20を数え、病床は278床までに成長した。外来患者数は年間20万人、入院患者数は8万人であり、年間2,000台の救急車を受け入れる一般病床・地域包括ケア病床・介護療養病床を持ったケアミックス型の病院として、佐久地域の二次医療機関の中核となっている。佐久市は長野県内でも発展を続けている都市なので、今後地域医療に与える影響はさらに大きくなることは疑いようがない。
限られたマンパワー
さて、これだけの実績を持つ浅間総合病院なのだが、意外なことに循環器内科の常勤医師は篠崎氏ただ一人だという。すなわち、インターベンション治療を行うのは篠崎氏のみなのである。「マンパワーの増強は切に願っていますが、現状は私一人です。ですから、今自分ができることを最大限発揮できるように工夫しています」。親しみあふれる笑顔で篠崎氏は言う。中核病院といえども地域の病院では簡単に人員を増やせるというわけではないという。病院にも予算はある。その中でどういう診療科を充実させていくのか。経営サイドに考えを移せば、そう簡単に答えなど出せない。加えて昨今話題となっている「医師の働き方改革」という、現場の医師にとってさまざまな捉え方ができる命題が存在する。「難しいですよね。医療は時間で区切れるものではないところがありますから」と言う篠崎氏の言葉は、おそらく現場に立っている医師達のメッセージではないだろうか。もちろん、時間という観念を捨てて働けということになってはいけない。しかし、画一的に「これだけ勤務したから、今からこれだけ休みなさい」ということになってしまっては、モチベーションを持って日々奮闘している医師のためになるのだろうか、という疑問が残る。
「臨床の現場では、どれだけ患者さんを診たのかということが大変重要だと思っています。せっかく勉強できる症例があるのに定時だから帰らなければいけないということになると、貴重な研鑽のチャンスが減ることになってしまいます」と篠崎氏は言う。そして「時間外に呼ばれたくない”“遅くなるのは嫌だ”と言う先生も確かにいらっしゃるので、それは尊重する必要があります。ただ、やる気のある若手を従来とは違う方法でどのように育成するかも大きな課題だと思います。もちろん大病院でマンパワーに不足がないならよいのですが、当院のように人数の少ないところではなんともいかない話です」と続けた。確かに人的資源は大きな問題であることは間違いない。特に、循環器のように緊急に対応しなければならない科にとっては大問題である。しかし、医師の働き方改革は必ず施行される施策である。どうするのか。
作業効率をタスクシフトで改善する
この問題の解答の一つは、作業効率の見直しである。作業効率が上がれば、限られたヒューマンリソースであっても道は拓ける、と篠崎氏は考えている。浅間総合病院ではメディカルスタッフの力を借りてカテ室を回しており、サブは臨床工学技士にお願いしているという。毎回サブに付く臨床工学技士は経験値が非常に高くなるのでコミュニケーションも取りやすく、結果として質の高いインターベンション治療ができているということだ。いかに周りのスタッフに動いてもらうか、育てていけるかというところが、カテ室の効率化を支える鍵となる。
カテ室の中で効率化を高めるということを考えると、まず頭に浮かぶのがデバイス関連だろう。最低限、デバイスの操作方法を知ることは欠かせない。次は個々の技術・技能の向上だが「中小病院ではスタッフに対する評価がまちまちです。特別な技能による評価がされるようになればさらに彼らのモチベーションが上がって、より効率的な業務が望めるかもしれません」という篠崎氏の言葉からは、氏がどれだけスタッフの働きに期待しているかが伺える。浅間総合病院の場合は、医師が1人、臨床工学技士が2〜3人(横に立つ助手1人と外回り1〜2人)、看護師が2人、放射線技師が1人という体制がスタンダードで最小ユニットだという。
手になじむ操作感でストレスフリー
また、血管造影システムの性能いかんで作業効率は変わってくると篠崎氏は実感している。「当院は昨年7月に島津製作所製の最新装置を導入しました。この装置になってから、私は手技に集中できるようになりました。スタッフがタッチパネルを操作して、画面のレイアウトや設定を最適なものに変えてくれるのです。しかも、それが簡単にできます。こうした操作盤やタッチパネルのシステムの使い勝手の良さは、臨床工学技士や放射線技師も助かっていると思います」と、篠崎氏は装置の印象を説明した。
また、この装置はより進歩した被ばく低減(透視において前モデルに比べて最大40%近く低減)を謳っており「被ばく線量が減っているというのは、もちろん患者さんにとっても良いのですが、スタッフへの被ばく低減にもつながりますね」と篠崎氏。画質も良く、タッチパネルが単純化されているので、最新のアンギオシステムとしての便利さを体感できる。その他、ステント表示強調アプリケーション(SCORE StentShot)は重宝するアプリケーションで、浅間総合病院でもよく使うものの一つだと篠崎氏は言う。「この装置のもう一つの特徴は、AIを利用して画像構築を実現したSCORE Opera**です。画像処理構築にAIを導入する新たな取り組みであり、発展段階にあるところだと思います。ただ、われわれ現場の医師としては、世の中のAIと同じように全施設のビッグデータを利用して、どんどんと装置が発展するような未来が来ることを期待したいですね」

カテ室の効率化はますます重要になる
「カテ室の効率化を考えるうえでは、物事をコンパクトにしていくことが重要ですね。振り返ってみれば、今までは無駄が多かったのではないでしょうか。例えば、当院のように最小限のユニットで多くの治療は事足りるのではないでしょうか。患者さんの搬入のところから連携をうまく取れれば、結構な時間短縮が可能です。カテ室の効率化を進めていくのは、当院を含めた中小の病院でかなりインパクトのある考え方かもしれません」。実際に篠崎氏は、氏の言う最小限のユニットで多くの患者さんを治療し、治療の質もしっかり確保できている。だからこそ氏の考え方には説得力がある。実際にはもう少し人員が確保できればゆとりも出るのだろうが、篠崎氏一人でインターベンション治療を行っている事実は変わらない。氏が今自分にできることを最大限発揮できるよう工夫しているというのは、全く合理的かつ正しい姿勢だと感じる。スタッフの動線や準備、チェック体制などを今一度見直し、最適化を図っていけば、よりストレスのかからない業務体制ができあがるのではないだろうか。
これから何年か後には、間違いなく医療現場にも働き方改革という施策が発動する。発動してしまえば医師一人が働ける時間は制限される。作業量が非常に多いカテ室においてこれからは、物事をコンパクトにまとめていく発想が必要になってくるのではないだろうか。「働き方改革には良い面があることも事実だと思います。それに、たとえ施策がどうあろうとも、われわれ医療従事者は患者さんの助けになる存在でなければなりません。やらなければならないことは変わらないわけです。われわれはただプライドを持って前に進んでいけばよいのだと考えています」。穏やかでありつつ芯の通った篠崎氏の声が印象的だった。

