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時代と環境に合わせた変化をカテ室に


日本鋼管病院 循環器内科

細川哲先生

神奈川県川崎市にある日本鋼管病院は,1918年に日本鋼管(現 JFE スチール)の事業主病院として設立された川崎市初の総合病院である。企業立病院ではあったが,設立以来の基本理念である「地域社会への貢献」を一貫して継続しており近隣住民からの信頼も厚く,80年以上の長きにわたって地域に根ざした病院として親しまれてきている。現在では急性期はもとより,あらゆる疾病・病態に対して対応できる体制を整え,川崎市の地域医療 しっかりと支えている。川崎市は着々と発展し,2019年には人口国内6位となった。日本鋼管病院の持つ役割がこれまで以上に大きくなっていくことに疑いはない。その病院でカテーテル治療を任されているのが細川哲氏である。

もはや PCI は特別なものではない

長野県出身の細川氏は,都市部と地方の医療提供のスピードに差を感じていた。地方はどうしても都市部よりも医療の伝搬が遅れてしまう。細川氏がカテーテル治療 を目指したきっかけの一つがその点であった。「AMI な どの緊急時にカテーテルは,救命の大きな武器の一つとなると感じたのです。ですが,最初はカテーテルをまとめるのも一苦労でした」と,細川氏は笑いながら当時を 振り返る。細川氏は上司のPCIを見て覚えていった。現在氏は後進を育てていく立場にあるが,自分が育った時代と今は違うのではないかと思っている。ベテランの手技を見ながら自分の頭で PCI を理解していくことは重要 だが,若手の手技に安全を担保することも同じく重要だ。それならば,治療戦略等を言語化して伝えるほうが効率的だ。もちろん伝えられた側は,なぜそのような治 療戦略になるのかを考えつつ,手技に臨まねばならない。「PCI は今や一定の技術があって当たり前といった風 潮ですし,誰がやってもある程度の成績が求められます。時代と環境に合わせて教育も変えていく必要がある と思います」と,細川氏は考えを述べる。

医師の働き方改革をどう考えるか

細川氏自身は働き方改革自体には賛成の立場を取る。医師は自己犠牲を厭わないのが当たり前ということではいけない。誰にも自分の時間や家族・友人と過ごす時間が必要だ。むろん医師も同様である。緊急時の呼び出しはやむ負えないとしつつも,プライベートと仕事をきちんと切り分けることは医師であっても当然重要である。
「だらだら仕事をしていることと,がんばっていること とは別です。早く終わったら早く帰ればよいのですよ」 と氏は言うが,若手がもっとやりたいと考えていたとし たらどうなのだろう。また,格好の教育的症例に出会っ たときに教育する側,される側の双方がチャンスを逃し てしまうということにはならないだろうか。その疑問を細川氏にぶつけてみた。「そういう問題は 確かにありますが,トータルでバランスが取れていれば よいと思います」と返ってきた。すなわち,定められた 労働時間が過ぎたら否応なく休みになるというのではな く,ある程度現場の意見や裁量に任せてもよいのではな いか。現場の本音はそれだろうと考える。 また,緊急症例が入った際,絶対に休まなければいけないスタッフが多く出てしまうと,循環器は対応が難しくなる。一つの地域で循環器をまとめてセンター化し,一極集中にするという手もあろうが,今すぐ現場でどうこうできるレベルの話ではない。

どのように休むかを工夫する

働き方改革を推進していけば,現場の効率化は今後さ らに注目されるだろう。その点で言えば,日本鋼管病院 ではコメディカルたちが仕事の分担に大きく関与し,現 場全体の業務効率化に一役買っている。また,院内会議 を業務時間内に時間を決めて行うことも,業務効率の改 善につながるという。カテーテルカンファランスは朝の 9 時から 15 分間といった具合に業務時間内に行うように しており,そうとなれば院内業務をより効率良くしなけ ればいけないという意識が芽生える。 休みを取ることについて日本鋼管病院は柔軟で,責任 の所在がはっきりされているなら,現場の判断で仕事量 の配分をうまく組むことができる。「病院も“ちゃんと休 んでくださいね”というスタンスですから」と細川氏は 微笑む。例えば当直にしても,内科当直ではあるが各科 当直ではない。すなわち,どのような病態にもかかわら ず初期対応にかかる人数が減るので,人的資源の節約に なる。これも医師一人一人の負担を減らすためのヒント につながるかもしれない。自分の専門分野でないところ も診ることになり医師の一般力が試される感じだが,聞 けば「全ては研鑽次第」と細川氏は答えた。加えて研究 会や学会,他の施設の見学をすることで自分の引き出し は増えるという。特に他施設の見学は勉強になることが 多いと感じられるそうだ。

業務効率化を進めてスタッフの負担を減らす

具体的な業務効率化としては,手に取るデバイスをう まく使えるようになることである。それには各種デバイ スが体内でどう動いているかをしっかりと見ることが大 切である。日本鋼管病院では2022年秋に同年4月に新発 売されたアンギオ装置(島津製作所:Trinias)を導入し た。細川氏は言う「極論,被ばくがゼロなら患者さんの 健康には害をなさず,手技を延々とできて,成功率は上 がります。したがって,被ばく量は少なければ少ないほうが良いことは疑いようがありません。新しく導入した 装置は AI 技術により低線量化を図っていますし,CTO の際も低線量で手技を進められるので,装置自体に高い ポテンシャルを感じます」。また,「特に SCORE Stent- View 機能は,手技中に作業を一切中断することなくス テント強調画像を得られるので,効率的な PCI 行ううえ で大きなアドバンテージですね」と付け加えた。 氏は主に PCI を担当しているが,最近は EVT も多く 行っている。そのときに有用なのが SCORE RSM だとい う。「画質が DSA 寄りで鮮明で,フォーカスにずれがあ りません。言うなれば,よく見える DA,動かせる DSA ですね。EVT をよく理解して作られたアプリケーション だと思います」と細川氏。この他にもさまざまな支援ソ フトが搭載されているが,完全に把握しきれているわけ ではなく,今後もスタッフと協力して装置をさらに使い こなせるようにしていきたいと細川氏は語った。

テクノロジーがカテ室を変える可能性

今までに馴染みがない支援ソフトの中で細川氏が特に 強い印象を持っているのが,リアルタイムで手技中の線 量のホットスポットが視覚的に分かる Dose‒eye Live と いうものだ。C アーム角度をベースとした線量カラー マップとなっていて,どの角度での線量が高いのか一目 で把握できる。Dose‒eye Live は日本鋼管病院では主に 技師が操作室で使っている。リアルタイムの線量が可視 化されたことで,技師側から術者に対して意見も出るよ うになった。「今まで自分一人で考えていたのが,技師さんからもどの角度での線量が高いかを伝えやすく,素早 くサジェスチョンができるようになったのは本当に良い ことだと思います」と細川氏は喜んでいる。やはり術者 は手技に集中したい。手技に必要な情報を分担できると いうのはありがたいし,手元に集中できるので仕事も早 くなる。もともと風通しの良い日本鋼管病院のカテ室 チームだが,チームとしての動きもよりスムーズにな り,一層の作業効率化が望める。

循環器を含め,緊急の対応を要する診療科について は,働き方改革の中身が気になるところではある。「働き 方は個人のライフステージに合わせて変えていく必要が あると思います。医師だって一人の人間ですから」とい う細川氏の言葉は,カテーテル治療を行う循環器内科医 の言葉として非常に印象的だった。


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