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良好なカテ室環境の構築とは


亀田総合病院 循環器内科

松村昭彦先生

在学中は消化器内科を目指していたという松村昭彦先生は,最終的に患者さんと最後まで向き合える循環器内科を選んだ。劇的に治療効果を実感できる循環器治療に魅力を感じている先生は,とにかく患者さんの喜んでいる顔を見たい一心で,日々カテーテル室で奮闘してきた。今回は松村先生に良好なカテ室環境をどう作っていくかについてお伺いした。

松村先生が所属しているのは千葉県鴨川市にある亀田総合病院だ。鴨川シーワールドの斜め向かいに位置するリゾート感にあふれる立地だが,千葉県南部の救命医療を担う基幹病院として,地域住民からの信頼を一身に受けている。病床数は917床,標榜科は35科と充実しており,2005年に竣工した13階建てのKタワーは350床すべてがオーシャンビューとなっている。2023年3月にTrinias B8s with SCORE Operaの1号機(バイプレーン)を導入し,最先端の設備でカテーテル検査・治療を行っている。

松村先生にカテ室の環境をどのように整備しているかを尋ねたところ,まずは「人」という答えが返ってきた。例えば,1日あたりの検査・治療に要する時間の計算が不可欠であり,可能なかぎり勤務時間内に仕事を終わらせることに留意する。そのために,症例の組み方を工夫する。スタッフの配置に目を向けると,医師とメディカルスタッフの就業時間は時間軸が異なる。そのため看護師をはじめ,メディカルスタッフが交代するタイミングなどへの配慮も欠かせない。

カテ室に鎮座する血管造影装置は,いわゆる良い意味で空気のように,ごく自然にありながら必要不可欠な存在であってほしいと松村先生は考えている。Triniasは電源を入れてからの立ち上がり時間が約90秒と早く,特に放射線技師から高い評価を得ているという。たとえトラブルが起こってもすぐリカバリー(再起動)できるので,検査台に寝ている患者さんに不安を与えにくい。何か良くないことが起こったときでも慌てないためには,やはり使いやすい装置が良いのは当然だ。

「患者さんはいつカテが終わるのか,常に不安なのです。リカバリーが遅ければ,それだけ偶発症のリスクが高まります。装置に求められることはトラブルが少ないこと。トラブルがあってもすぐ復旧できることに尽きます」と松村先生は言う。

加えて,高い成功率が望める手技であっても,実際にその手術を受ける患者さんは“五分五分の感覚を抱いている”と考えることの重要性を説く。患者さんの不安感を和らげるため,行う手技のメリットとリスクを事前にしっかりと説明し,コミュニケーションをとっていく。患者さんが覚醒している中で行うインターベンション治療では,ここがキーポイントになるのではないかと思われる。

患者さんと職員がリラックスできる状況があれば,結果的に手技や検査はスムーズに進み,医療安全にも寄与するという考えのもと,緊急処置が必要になったときでも,動線と機材の配置も含め,ストレスがかからない居心地の良い空間を作るということを念頭に置いて松村先生はカテ室環境を整えている。ただ,4月からの「働き方改革」に対してどのように対応するべきか悩ましい。使える業務時間が減ってしまうため,よりスムーズにカテ室を運営していかねばならない。

松村先生いわく,1人の術者が責任を持って最適の治療を行ったと言えるのはおそらく年間200~250件である。これを超えると精神的にも肉体的にも疲労してしまい,治療の質が低下する。つまり「医師の働き方改革」はこの数字にも影響すると考えられるのだ。時間内にすべてを終わらせなければならないとなると,検査も治療も詰め込むことはできない。救急においても足枷となって影響するだろう。苦しんでいる患者さんを早く治療してあげたいと思っていても,制度上それができなくなってしまう。

「最初は相当混乱することは分かっています。夜の緊急救急を救命救急科だけが応対するとなれば,マンパワーが足りません。現在の日本の心筋梗塞の死亡率は5%以下ですが,これはおそらく緊急カテーテル検査のおかげだと思います。ですが,今後はそれもしにくくなるでしょうね」。医師の働き方改革で最も難しくなると思われている救急医療,循環器内科にとっては切実な問題というほかない。

Triniasは3つの大きなデザインから設計されている。
可能なかぎり被ばくを低減するための「ALARAデザイン」,効率的なカテーテル治療を支援する「Leanデザイン」,陳腐化することなく使い続けることができる「Sustainableデザイン」である。

Trinias Operaの導入後,まず感じたのは動作速度の速さだったと松村先生は言う。Cアームの動作スピードが速いため,当然検査時間はその分だけ短くでき,操作にもストレスを感じない。一方,患者干渉の可能性が高い深いポジショニングなどは,自動的に低速モードに入り警告音が鳴るため,安全面でもうまく制御されているというのが先生の実感である。

またTriniasでは,Cアームやモニタのケーブル類をケーブルガイドにて収納することでケーブル露出を抑えている。この点も先生は好感を持っており,先生が重要視しているカテ室の動線確保にも一役買っているようだ。

亀田総合病院に導入されたTriniasはバイプレーンシステムである。基本的なことであるが,先生にバイプレーンシステムの良さを改めて伺った。やはり,2方向から撮影できるため造影回数をシングルプレーンよりも減らせる点や,2方向で観察できるがゆえに,偏心性病変においては大きなメリットが出る点をあげられた。

また,当然シングルプレーンとしても運用ができるため,「他の施設さんでも導入可能であればバイプレーンがいいと思いますね」とのことだ。

被ばくや画質に関して伺ってみると,「常に4Kテレビのような画質が必要かというと,そうではありません。必要なときに必要な箇所の高画質画像が得られればよいのです」との答えが返ってきた。撮影ではしっかりとした画像を出しながら,透視においては治療に必要な最低限の線量で運用できる装置が求められているのである。

TriniasにはAIフィルターを搭載した画像処理エンジンSCORE Operaが搭載されており,これが被ばく低減にも寄与しているという。亀田総合病院では従来装置からそうであったが,メーカー側からのデフォルト状態のX線条件をさらにカスタマイズし,低線量でのカテーテル治療を行ってきた。今回Triniasにおいても同様に導入後カスタマイズを行い,AI画像処理と相まって従来よりもさらなる低線量運用を実現したという。

カテ室にかかわるメディカルスタッフは一人一人,自分たちが何をしているのかを理解し,チームとしてどうかかわりあっていくかを考えていかなければならないと松村先生は言う。

「一緒に業務に取り組んでいくことで,われわれ医師を含めたスタッフ全員の目線が揃ってくるのです。新たな課題が見つかったときにも,互いにカバーしあえるようになります」と松村先生。自身の考え方に自信を持ってカテ室環境を整備することに余念がない。

「この地での私のキャリアは本当に長く,患者さんをはじめ,すべてに愛着があります。患者さんに向き合って,丁寧な治療を目指していくということが自分のモットーですから,治療した患者さんが喜んで笑顔である姿を見続けたいですね」と,松村先生は自身の医師としての在り方と希望を語った。


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