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カテ室業務のホームポジション


社会医療法人北晨会 恵み野病院

副院長 牧口 展子 先生
心血管病治療センター長 下岡 良典 先生

 カテ室の環境をより良いものにするにはどうするか。 そもそも,より良い環境とは何か。「高性能な血管撮影装 置が導入されると,仕事が進めやすくなるというのは確 かです。特に恵み野病院は 10 年以上使ってきた装置から の切り替えだったので,その印象は強いですね」と牧口 先生。時代の流れに合わせてある程度改善をしていると はいえ,現在のネットワーク,サーバー,電子カルテの 活用などの観点からみても,10 年前の装置の運用ではさ すがにつぎはぎだらけの感は否めない。「新機種導入に あたって,まずはカテ室の設計から見直していきまし た。部屋の大きさは変わらないので,動線を図面で決め た後,新装置や物品を入れた後に動線を再度確認しまし た。これまでは周辺機器のケーブルが思いのほか多くて 煩わしかったのですが,新装置導入に合わせてケーブル をまとめて格納してもらいました。」と下岡先生は言う。 島津製作所製の Trinias を選んだ理由を伺ってみると,1 台で複数の治療ができる装置が必要だった,という答え が下岡先生から帰ってきた。恵み野病院のカテ室は 1 部 屋。ここであらゆる領域のインターベンション治療に対 応する必要がある。だからこそ PCI だけでなく複数科で プロフェッショナルに共通利用できるものが欲しかったと牧口先生は言う。

 新導入の Trinias は,バイプレーン装置であるが,こ れまで使ってきたシングルプレーン装置とは異なり,2 つの C アーム操作に慣れるのにある程度時間が必要だっ たと下岡先生は振り返る。使ってみて,特に CTO 治療 には 2 方向から同時に透視が見えるバイプレーンがやは り都合が良いと感じている。牧口先生は,バイプレーン は造影剤量を減らすことにも寄与するとし,腎機能が低 下している患者さんには適しているシステムだという。 アドホックで治療することも多い恵み野病院では,前述 のように 1 部屋でインターベンションを全て賄わなけれ ばならず,できるときにできるだけ治療を進めたいとい う事情もある。事前の CT などで病変の評価を行い,最 初はバイプレーンで撮影し,治療においてはケースに よってバイプレーンとシングルプレーンを使い分けてい るそうだ。新しい装置が導入されたのは 2024 年の 4 月 1 日で,取材日はちょうど半年が経過したタイミングだっ た。「やっぱり新しい装置はいいですよね。モニターは大 きな 1 面で,自由に他のイメージングの配置もできるの で効率的です。以前は配線を変更したりスイッチャーを 切り替えたりして煩雑でした」と牧口先生はにこやかに ほほ笑む。

 新装置の導入の際,下岡先生は一つのアイデアを投下 した。スタッフのホームポジションの設定である。ホー ムポジションが設定されると,各スタッフの考えと動き が整理され作業の重複などを減らすことができる。カテ 室全体の負荷が軽減され効率化も促進される。実際にカ テ前の準備はスムーズになり,各スタッフの動きが最適 化されたという。スタッフ各々が自分の行動に対しこれ まで以上に責任を持つようにもなった。これはスタッフ のモチベーション維持につながると下岡先生は言い,現 場の最終責任はカテ室を率いる者が持つと表明すれば全 員の心構えがしっかりする,と続けた。「以前は主治医が カテ所見をすべて書いていましたが,最近は分業化を進 めています」と牧口先生。分業化は手技を時間内に終わ らせるための大切な工夫だ。また,Trinias と一緒に導入 した KADA-View(フォトロン社)も効果があるようだ。 これに残した看護師の記録を病棟と繋ぐことでカテ室の 現況がリアルタイムで分かり,病棟側の受け入れ準備も 非常にスムーズになった Trinias の導入に合わせて DX 化 を進めていった結果,情報の共有を含めてカテ室がシス テム化され効率的な運用が可能になったと牧口先生は喜 ぶ。新たな血管撮影装置の導入は,単に高額な最新装置 が導入されるというのではなく業務全体を見直す大きなきっかけになるのだ。

 Trinias は被ばく量低減効果が高く,その効果はについ ては「数字として明らかですね」と下岡先生は語った。 以前の装置が 10 年以上前のモノなので単純比較はでき ないと前置きしながらも,積算線量は 5 分の 1 以下に なったという。装置そのものの性能もあるだろうが,牧 口先生も言うように術者が線量に気を付けるようになっ たことや画質が良くなり透視保存機能が充実したため透 視だけで完了する手技が増えたことも線量低減の大きな 要素だという。特に EVT に置いては DSA 撮影自体の頻 度が減ったことを下岡先生は振り返り,SCORE RSM を 使えば足のように長い血管も造影剤の流れに合わせて 1 度の造影で全体を把握できるので線量も低減できるとい う。足が長ければ SFA だけでも 2 回の DSA 撮影が必要 になる。対して SCORE RSM では 1 度で済んでしまう。 SCORE RSM を使えば DSA が必要になるのは造影が薄く なる膝下だけだそうだ。恵み野病院でも若いドクターや 女性医師が多くなったので,被ばく低減は大きなメリッ トだといって間違いない。「体感的にカテが続いたとき の独特の疲労感が Trinias を使うようになってからなく なった」と下岡先生。カテ室運用の見直しや新装置導入による効果が手技の時間短縮につながりそのように感じているとのことだ。
 

 加えて「Trinias はリファレンス画像の選択がやりやす いですね」と下岡先生は言う。今までは最後の画像とリ ファレンス画像の切り替えを CE に口頭で伝えて切り替 えてもらう必要があったが,Trinias ではボタン一つで最 後の画像に戻ることができる。このような小さな工夫が 手技全体の時間短縮につながっているとのこと。装置の 起動時間も早く,加えて個別手技特有の C アームの角度 のメモリーができるのは CTO 治療に向いているという。 コンソールを含めて装置全体の使い勝手が良く,先生方 は新しい装置に満足していると口を揃える。Trinias には 多くのアプリが搭載されているが,施設に合ったアプリ ケーションパッケージを選択し,バージョンアップして 使い続けることができる SCORE Link というサービスも 提供している。その施設に適したアプリケーションの セットを選択できるプラットフォームだ。「変化する ニーズに合わせ,機能が成長していくというのは良いで すね」と牧口先生は将来の期待も込めてそう話した。

 

 話は変わって,病院の管理者としての立場である牧口 先生に,働き方改革が現場にどのような影響を及ぼして いるかを尋ねてみた。すると開口一番,「もちろん影響は あります」という答えが返ってきた。1 カテ室体制の恵 み野病院では,緊急が入ってきたときにはどうしても遅 い時間まで業務が続いていた。働き方改革施行後はそう いうわけにもいかず,苦労の連続だったが,現在は以前 に比べて時間が大幅に超えることにはなっていないとい う。では,時間が上限になってしまった場合はどうするのか。「労働基準上のカテゴリーでは,医師も部長以上は 管理監督者となります。時間外という概念がそもそもな いのですよ」という下岡先生の言葉に続けて「これはどこでも変わらないと思います。若い先生たちには超過労 働させられないですから中間管理職あたりが一番忙しく なるのですよ」と牧口先生が続けた。とはいえ,インター ベンション治療に入ってくる若手はできるだけ経験を積 みたいと考えている。そして彼らを指導する側も,多く の経験をしてほしいと考えている。国が決めた施策であ る以上従うわけだが,もう少し柔軟性があってもよいの ではないかと思ってしまう。

 恵み野病院の診療圏は恵庭市とその周辺の市町である。なかでも恵庭市は北海道で唯一人口が増えているエ リアだ。診療圏の人口約16万人に対して,カテラボは千歳市に1つ,そして恵み野病院の計2つで,EVT の相当 数を恵み野病院が引き受けている状況である。また,その2つの施設はどちらも1カテ体制である。カテ室がもう1部屋あればまた話は変わってくるのだと思うが,施 設の現状が変わらないならばスムーズな病病連携の構築を考えていくほかない。病病連携を深めていくことで各 医療機関の負担が軽減される,というのが牧口先生と下岡先生の共通概念である。病院連携・病病連携の構築は 現在進行形で進んでおり,顕在化してくるハードルをどうクリアしていくかが課題となりそうだ。牧口先生は「北海道では内科医は減り,循環器内科医はさらに減っているのが現状です」と将来の北海道,特に地方の医療に少々不安感を感じている。今後,北海道の地方に潤沢に医師が派遣されることについては楽観視できない状況だという。やはり国が進めている医療機関の集約化は否 が応でも進んでいくのだろう。こうした状況下でも恵み 野病院は地域住民が健康で安心して暮らせるよう,地域 に寄り添い,医療・介護の多岐にわたる面で主導的役割を担い続ける。


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